理想の注文住宅を建てるには

理想の注文住宅を手に入れ、絶対に失敗しないための注文住宅の秘訣を1級建築士である建築家八納啓創がお伝えするブログです

Q&A 率直な質問ですが、なぜ気密と断熱が大切なのですか?

(ご質問)
最近、いろいろなところで高気密、高断熱の家というフレーズを見ます。
冬暖かく、夏涼しい家が理想ですが、断熱材がある程度いるのは分かりますが、例えば気密が必要な理由などちょっと良く分かりません。またそれ以外に、押さえるところはありますか?いろいろと聞いてごめんなさい。
 

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【1.5階分の高さの吹き抜けを有するLDK。断熱と気密をしっかりとれば、これくらいの空間を12畳用のエアコンで光熱費を押さえて十分暖かく、涼しくすることが可能です】
 
 
(八納の回答)
聞いてくださってありがとうございます。こういった質問大歓迎です。
 
さて、ご質問の件。
ここ数年、国の動きも含めて家の省エネ化の取り組みが進め始めました。
一言でいうと「光熱費のかからない、地球環境に負荷の少ない住まいづくり」を目指しています。一般の人たちに分かりやすいフレーズが「光熱費がかからず、冬暖かく、夏涼しい家」でしょう。
 
さて、断熱と気密の働きについてですが、私は良く衣服に例えています。
断熱が「セーター」であれば、気密は「ヒートテック」です。
 
例えば、冬場、裸に直接セーターを着て外を歩くのを想像してください。
・・・・寒いですよね(笑)。
 
それに対して、ヒートテックを着て、その上にセーターを着れば暖かくなると思います。
 
イメージで理解してもらえると嬉しいのですが、衣服で例えるといくらセーターがぶ厚くてもすき間が空いていたら寒いのと同様、家の断熱材がぶ厚くなっても、ヒートテックにあたる気密が無ければ、隙間から外気が入ってくて、冬場は家の中にどんどん冷気が入ってくる寒い家になってしまいます。
 
これが断熱と気密の役割です。
断熱と気密はセットで考える必要があるのです。
 
では、どの程度断熱と気密を取ればいいかもお伝えしましょう。
 
2015年ごろまでに主に使われていた言い方ですが、断熱の性能を表す熱損失係数Q値というものがあります。2020年に現在、次世代省エネ基準と言われているものが「必須」になります。関東~九州までの太平洋、瀬戸内海沿岸エリアでは、この数字が2.7です。数字が大きいほど性能が落ちていきます。参考までに、フランスで同じ気候エリアでは、この数字を2.0以下にすることが義務付けられています。世界の基準からみても、日本で2020年に義務化される基準がまだまだ遅れていることが分かるでしょう。
 
気密に関してです。今の日本には「気密」に関しての規制がありません。しかし、別のQ&Aでもお答えしましたが、ヨーロッパ基準並みの気密性能は必須です。少し専門用語でいうと、隙間相当面積C値というものが、1を最低切るくらいは、一つの目安にしたいところです。出来れば0.5を目指したいですね。このC値が大きくなればなるほど、隙間が大きくなります。
 
ちなみに、日本でも以前目安の基準として北海道などで2、太平洋沿岸や瀬戸内海では5という数字がでていました。・・・5というのは1の5倍の隙間です。
 
この目安ですが、現在は省エネの基準から項目からなくなりました。
その背景はいろいろとありますが、なくなったからと言って、無視していい数字ではありません。
 
逆に言うと、一般の方が「気密はC値で1、出来れば0.5を切るようにお願いします」というフレーズを覚えていただく必要があります。もちろんそういったことに詳しい設計事務所工務店の場合は、問題なく対応できると思いますが、まだまだ業界の中でも知識を持ち合わせている人が少ないのが現状です。
 
断熱、気密以外のところで押さえた置きたいのは
「夏に極力家に太陽光を入れず、冬に出来るだけ太陽光を入れる工夫」をすることです。
 
これをパッシブデザインと言いますが、窓の位置や窓の性能、方位に合わせて庇を出すなどで対応していきます。特に、家の南側は庇が重要です。
 
これくらいの知識を持っておくと、上記の話についてこれない専門業者を見極めやすくなります。
 
最後は余談になりましたが、参考にしてもらえると嬉しいです。