理想の注文住宅を建てるには

理想の注文住宅を手に入れ、絶対に失敗しないための注文住宅の秘訣を1級建築士である建築家八納啓創がお伝えするブログです

リビングイン階段で後悔しないために知っておきたいこと

「Q&Aリビングイン階段はオススメですか?」で、リビングイン階段に求めているものを間違うと後悔することが多くなりますよ、という話をしました。
 
正しいリビングイン階段の使い方を意識すれば、リビングイン階段は空間を豊かにもダイナミックにもしてくれます。ただし、前述したQ& Aでも軽くお答えしましたが、快適に作るためにはかなりの工夫が必要になります。今回は、後悔しないための3つポイントをお伝えしましょう。
 

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その1)断熱性能を高めることが必須

 大きな吹き抜けにリビングに階段を設置しているケースが増えています。写真で見るととても快適そうに見えます。しかし、断熱と気密の性能が低いと「夏暑く、冬寒い」空間になってしまうということを多くの方が認識していません。

 

 快適でダイナミック、豊かな空間に住みたい!と願って作った大きな吹き抜けを何も考えずに作ってしまうと、夏はいくら冷房をかけても涼しくならず、冬の暖房を最大にしても暖気は全て吹き抜けの上部に上がってしまい、足元には冷気が漂うなど、住む人の思いを大きく裏切ってしまうのです。
 
 ポイントの一つ目は断熱性能です。
 
「我が社は、次世代省エネ基準を基本仕様にしていますので、吹き抜け空間を作っても問題ないです」という説明をする施工会社や設計事務所がいますが、それはあくまでも現行法の省エネ基準に対してなのであって、世界基準で見ると、日本の次世代省エネ基準は、0.5〜0.7倍程度の断熱性能しかありません。世界は義務基準なのに対して日本は次世代の推奨基準(2020年に義務基準になる予定)なのにです。
 
 最低限でも次世代省エネ基準のトップランナー基準と呼ばれている性能値ぐらいはないと吹き抜け空間のあるリビングの空調で快適に暮らすのは難しくなるでしょう。
 
 既存の家にお住いでリビングに大きな吹き抜けのある方は、窓の断熱改修(二重窓にする)や部屋内から外壁側に対して断熱改修をするなど、断熱改修を得意に行っている工務店設計事務所に相談してみましょう。
 
 そして、これから家づくりを考えていて、リビングイン階段など吹き抜け空間を考えている方は、トップランナー基準以上の断熱性能を持ち合わせた仕様を要望として施工会社や設計事務所に伝えてみましょう。
 
 
その2)ほとんどの人が知らない気密性能も外すことが出来ないポイント
 断熱性能と合わせてとても大切なのが、気密性能です。この気密性能というのは「家にどれだけ隙間がないか?」を示したものです。例えば、素肌に分厚い毛糸のセーターを直接来て出歩くと・・寒くないですか?それに対して、セーターの下にヒートテックなどを着ると途端に暖かくなります。
 この時のセーターが断熱材にあたり、ヒートテックが気密性能にあたります。
 
「気密性能が高くなると息苦しくなるのではないですか?」という方もいます。顔にビニール袋を被しているくらいのことをイメージしているのでしょう。それはまったく問題ありません。逆に家の気密性能を無視しすぎているのが日本の家です。
 
 先進国の多くでは、この気密性能に対して義務基準がありますが、日本には義務基準や推奨基準さえもありません。気密性能はC値という言葉で表されるのですが、この数字が1を切るくらいすることが、一つの基準です。施工会社や設計事務所に「C値が1を切るようにお願いします」と言ってみましょう。
 
その3)高断熱・高気密にする時に外せない「太陽光のコントロール法」を知る
 「高断熱・高気密の家にすると夏は家の中が暑くなるのではないですか?」という質問を受けることがあります。これは、半分正解だと言えるでしょう。
 
 なぜなら、高断熱・高気密の家を提供している施工会社や設計事務所の中で真夏の太陽の光をふんだんに家の中に取り入れる間取りにして、家の中に熱をこもらせてオーバーヒートさせてしまうことが実際に多々あるからです。
 
 吹き抜けを作るには高断熱と高気密化を図ることはとても重要です。しかし、太陽の光をどのように取り入れるか?を考えずに家を建ててしまっては本末転倒なのです。
 
 ポイントは、夏の太陽の光は極力家の中に入れず、冬の太陽の光を極力家の中に取り入れる工夫です。例えばその工夫の一つとして、南向きにつけた庇はとても有効です。夏は太陽高度が高くなるので、庇が影を作ってくれます。逆に冬は太陽高度が低くなるので、お昼時間ぐらいに家の中まで光が入り、家の中を温めてくれます。実は、こう言った工夫は昔からの日本家屋では当然の手法として取り入れていました。それが現在では、庇をつけないデザインの建物が増えてしまったために、太陽光のコントロールを無視した家が増えてしまったのです。
 
 断熱と気密が低い家ではここまで影響しなかった太陽光のコントロールですが、高断熱・高気密化を図った家では太陽光のコントロールがとても重要になるのです。「日射取得と日射遮蔽をきっちりと考えてください」とお願いするといいでしょう。
 
・・・・いかがだったでしょうか?
 
これらの内容を見るとリビングイン階段を作ることが難しい、不安になると感じる人もいることでしょう。しかし、逆に言うと上記のポイントを押さえながら施工会社や設計事務所に要望を出せば、それに答えるリビングイン階段の気持ちの良い空間ができるでしょう。
 
もし、施工会社や設計事務所で上記の内容を話してもピンとこない場合は、リビングイン階段を諦めるか、しっかりと受け答えの出来る施工会社や設計事務所を選びなおすことがポイントになるでしょう。参考にしてみてください。