ヨーロッパにはリビングがない!?
日本に当たり前のようにある「リビング」。
日本においてリビングは「食事等以外の時に家族の集う代表的な場所」です。
家庭によっては、TVを見たり、色々な話をしたりしなかったりと様々ですが、リビングはもともとアメリカから輸入された概念で「家族が平等に集まる場」というイメージがありました。アメリカがリビング発祥の地なのです。
アメリカの歴史をひも解くと、もともと、欧州で迫害を受けたピューリタン思想の人たちがアメリカに定住しはじめたところに遡ります。ピューリタン思想の中には「人は生まれながらにして平等」という価値観があります。
生まれたての赤ちゃんに対して部屋を与えるのは、この価値観が背景にあります。また、アメリカでは生まれて間もないころから赤ちゃんを一人で部屋に寝させるのもこの価値観に基づいています。
それに対して長い間、フランスをはじめとした欧州では「人は生まれた時は動物と一緒で、育つに従って人間として成長していく」というような価値観が広がっていました。
子供の頃は人間として一人前に扱ってもらえないのです。実際に、フランスなどでは、20世紀後半ごろにようやく公団などで子供部屋を設けるようになったくらいです。
そういう意味でも長い間欧州には「家族が平等に集まる場」であるリビングは一般的に存在していませんでした。
それに対して欧州の家の中には「大人が集う場」として「サロン」という名の場所が存在します。
サロンという部屋が聞き慣れない人もいると思いますが、日本の家でいうと「応接間」がそこにあたります。応接セットをおいて、人が来たら招き入れるというのは、欧州のサロンによく似ています。
欧州では、サロンには基本的に大人しか入らず、子どもや家族は基本的にダイニングにいることが多いです。(大きな家の場合は、ファミリールームという家族の集う部屋もありますが、基本的にはダイニングに集います)
欧州では、大人が集うという風習、習慣があるので、このサロンが機能していますが、日本では、応接間の部屋の意味や使い方も全く分からずにソファーセット置場になっている場合も多く見られました。
この文章を読んではじめて応接間の意味を知った方もいるかもしれませんね。
しかし、成熟した大人の社会には、「サロン」的なコミュニケーションがとれる場があることは重要です。
家づくりを考えるとき、「どこに人を招き入れようか?」を夫婦で共通認識を持つことは家造り成功の秘訣の一つです。
今回の話をきっかけに、リビング+サロン的な場所を家の中に組みこんでいこう、というふうに幅を広げて考えて見られるのもいかがでしょうか?
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